2022年度開催報告
第1回公開集会(オンライン開催)
開催日時:2022年5月30日(月)16:00~18:00
開催方法:オンライン開催(Zoomミーティング)
講演者:
①古宇田亮修(三康文化研究所研究員・淑徳大学長谷川仏教文化研究所専任研究員)
「釈迦の用いた比喩を読み解く」
②西村実則(三康文化研究所研究所研究員・大正大学名誉教授)
「知恩院三門の戴冠仏」
定員:先着80名
参加費:無料
内容:
この度、三康文化研究所において、梵語文献学、仏教思想史が専門の古宇田亮修研究員と釈尊伝・印度部派仏教・近代仏教学の確立が専門の西村実則研究員による2022年度第1回公開講座が5月30日にオンライン会議(ZOOM)により開催しました。
なお、今年度から名称を「公開集会」から「公開講座」に変更しました。
古宇田亮修研究員は、まず「直喩」と「隠喩」について例を挙げて説明し、言語と隠喩が切っても切り離せないことを認知言語学の成果も交えて紹介し発表されました。そして、インドではそれらがどのように分析されてきたかを述べたのち、釈迦による最初の説法で述べた「私は正しく完全に目覚めている。」という文章を様々な角度から分析されました。そして従来「五蘊」(ゴウン)(心と体の働き)と呼ばれてきた仏教の中心的教義が「大枝の隠喩」であることを種々の角度から指摘し、「涅槃」(ネハン)(迷いが消え悟りに入った境地)や「渇愛」(カツアイ)(激しい愛着)についても、比喩として捉えることを提言されました。
西村実則研究員は、京都にある浄土宗総本山知恩院三門(寺院の門)内部にある三門中央の戴冠仏について次のような考察を発表されました。
いうまでもなく華厳の教えでは釈迦イコール・ビルシャナ仏であるので、中央の戴冠仏は十六羅漢側からみれば同時代の釈迦であり、善財童子側からみれば華厳のビルシャナ仏であります。禅宗の場合は、華厳の思想がその背景にあるので、臨済宗の鎌倉、京都の大寺院の三門にこうした戴冠仏が配置されました。
一方、浄土教と華厳思想とは歴史的にみても異質の流れでありますが、知恩院三門は禅宗様式をとっています。同じ浄土系でも東本願寺の三門は『無量寿経』に沿って釈迦を中心に阿難、弥勒が配され、こちらは浄土教義に則った様式である点で、知恩院三門は東本願寺とはまったく異なっています。
以上のことから、知恩院の本尊は「戴冠仏」ですが、釈迦仏でもあり、華厳のビルシャナ仏でもあるのではないかと提言しました。
寺院関係の方、大学関係者の方、浄土宗関係の方、仏教にご興味をお持ちの方等38名の方から聴講のお申し込みをいただきました。
また、今回もマスコミ関係として株式会社仏教タイムス社、および株式会社中外日報社の記者の方が取材のため聴講されました。ご聴講された皆様には心から感謝申し上げます。
聴講された方々からは、「仏典の中の釈迦の言葉の比喩、その比喩が使われた当時の社会背景など、もう少し多くの例を聞きたかった」「共有画像の文字が細かいと、画面サイズによっては判読しづらい」「少し難しかったので、専門家向けだと思った。一般向けのものがあったら、次回も参加してみたい」等のご意見を頂戴しております。
また、今後、講座で取り上げて欲しいテーマとして「今回の講座で話題にあった(江戸幕府京都大工頭)中井家文書について」「十二支縁起について」「瞑想について。脳科学と仏教瞑想の関係について」「法華経、維摩経、唯識思想などについて」等のご要望をいただいております。
今後、皆様のご期待に添えるよう、聴講された方々の貴重なご意見をご参考にさせていただき、皆様のご要望に研究員の熱意で少しでもお応えできるよう取り組んでいきたいと考えております。
今回聴講され、ご希望された方々には、三康図書館のオリジナルグッズをプレゼントさせていただきます。
第2回公開集会(オンライン開催)
開催日時:2022年10月24日(月)16:00~18:00
開催方法:オンライン開催(Zoomミーティング)
講演者:
①石川琢道(三康文化研究所研究員・大正大学准教授)
「中国の浄土教僧曇鸞大師について」
②柴田泰山(三康文化研究所研究員・浄土宗総合研究所研究員)
「善導教学の再解釈」
定員:先着80名
参加費:無料
内容:
この度、三康文化研究所において石川琢道研究員(専門分野:中国浄土教思想史)と柴田泰山研究員(専門分野:中国仏教、浄土宗学)による2022年度第2回公開講座を10月24日にオンライン(ZOOM)により開催しました。
石川琢道研究員は、「中国の浄土教僧・曇鸞大師について」と題し、次のように発表されました。
日本の浄土教諸宗派の祖師として知られる曇鸞大師は、各宗の教学的な重要性も加味され、我々にとって非常に身近な僧とも言えます。しかし一方で、中国という異国の、そして北魏時代という今から1500年ほど前の、地理的にも時代的にも我々とは遠い存在でもあります。今回は、そのような祖師としての曇鸞の存在から離れ、中国の浄土教僧としての曇鸞の生涯とその思想について考えて参りたいと思います。
柴田泰山研究員は、「善導教学の再解釈」と題し、「善導の主著である『観経疏』を中心に阿弥陀仏報身論に関する再検討、ならびに比較思想的な視座による再解釈」について発表されました。
今回も、寺院関係者の方、大学関係者の方、浄土宗関係者の方、仏教にご興味をお持ちの方等55名の方から聴講のお申し込みをいただきました。今回もマスコミ関係者として、株式会社仏教タイムス社、株式会社中外日報社の記者の方が取材のため聴講されました。ご聴講された皆様に心からお礼申し上げます。
聴講された方々のお声をご紹介します。
「石川先生が曇鸞、柴田先生が善導に関するご発表とのことで、内容もタイトルから基礎的な部分の最前線の内容のようにお見受けしたので関心を持ちました」
「資料に写真が多く、実際に訪れてみたいと思いました」
「石川先生のご発表は写真や地図でのご説明などもとても興味深く、曇鸞についてより立体的に理解を深めることができました。柴田先生のご発表はマラルメやデリダの方法論との関連など私の理解力が及ばない面もありましたが、目次を示されての現在の各界での善導解釈の現状のご説明は門外漢にもわかりやすく、大変参考になりました。欲を言えば、手元資料を頂けると有り難かったかなと思いました」
「とても分かりやすく、研究の現状やどのような展望が見られるのかなど、明確な説明で大変勉強になりました。ありがとうございました。」
「仏教の知識を少しでも知ることができて良かったです。ありがとうございました。」
今後も、皆様のご期待に添えますよう、聴講された方々の貴重なご意見をご参考にさせていただき、みなさまのご要望に研究員の熱意で少しでもお応えできるよう取り組んでいきたいと考えております。
第3回公開集会(オンライン開催)
開催日時:2023年2月6日(月)16:00~18:00
開催方法:オンライン開催(Zoomミーティング)
講演者:
林田康順(三康文化研究所研究員・大正大学教授)
「法然上人の思想形成」
宇髙良哲(三康文化研究所研究指導員・大正大学名誉教授)
「浄土宗関東十八檀林制度の確立」
定員:先着80名
参加費:無料
内容:
この度、三康文化研究所において林田康順研究員(専門分野:法然浄土教・浄土宗学・日本浄土教)と宇髙良哲研究指導員(専門分野:日本近世仏教史・浄土宗・天台宗・真言宗・修験宗)による2022年度第3回公開講座を2月6日にオンライン(ZOOM)により開催しました。
林田康順研究員は「法然上人の思想形成」と題し、翌令和6年は、平安時代後期、承安5(1175)年に法然上人が浄土立教開宗されてから850年を迎えることから、なぜ法然上人は、浄土教隆盛の期に、新たに浄土宗を立ち上げなければいけなかったのかについて、新出の法然上人真蹟署名を紹介しつつ、その背景と意義について解説しました。
また、宇髙良哲研究指導員は「浄土宗関東十八檀林制度の確立」と題し、浄土宗内の動向だけではなく、徳川家康の宗教改革の視点から発表されました。
今回は、寺院関係者の方、大学関係者の方、浄土宗関係者の方、仏教にご興味をお持ちの方等78名の方から聴講のお申し込みをいただきました。更にマスコミ関係者として、株式会社仏教タイムス社、株式会社中外日報社のご担当者様が取材のため聴講されました。ご聴講された皆様に心からお礼申し上げます。
聴講された方々のお声をご紹介します。
「檀林の名称や各寺院が十八檀林に含まれていく過程・理由が興味深かった」
「大変勉強になりました。候文で書かれた檀林の文書の読み方を勉強したいと思いました。」
「大変参考になり新しい視点をもつことができました」
「資料が事前に配信されて、理解しやすかったです。浄土宗への理解が深まりました。」
今後も、皆様のご期待に添えますよう、聴講された方々の貴重なご意見をご参考にさせていただき、みなさまのご要望に研究員の熱意で少しでもお応えできるよう取り組んでいきたいと考えております。