三康文化研究所/三康図書館

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2023年度講演会開催報告

2023年度講演会 開催報告

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2023年度 第1回講演会

 

開催日時:2023年9月18日(月・祝)14:00~15:30

開催方法:YouTube・会場参加によるハイブリッド開催

テーマ:三康図書館でみる横溝正史

ゲストスピーカー:

浜田 知明 氏

黒田 明 氏

参加費:無料

定員:YouTube定員なし・会場先着30名

申込者:204名(内、会場参加は25名)

アーカイブ視聴回数:334回


内容:

2022年に生誕120年を迎えた横溝正史。

本講演では、横溝正史研究を行う浜田知明氏と『新青年研究会』会員の黒田明氏による対談を通して、金田一耕助シリーズの作家という既成概念を打ち破るお話を伺います。

三康図書館を活用して様々な調査、研究を行ったエピソードや三康図書館でしか確認できない貴重資料の紹介など、図書館を活用した文学作品の研究がどのように行われるか、その魅力に迫ります。

 

報告:

 昨年(2022)は作家・横溝正史生誕120周年でした。横溝正史は「金田一耕助」シリーズの作家として知られておりますが、三康図書館の前身である旧大橋図書館運営母体の博文館(大橋佐平創業、息子・新太郎が経営)で、雑誌『新青年』、『文藝倶楽部』、『探偵小説』等の編集長を務めながら作家としても活躍した人物です。

 今回の講演会では、長年横溝正史を研究してきた浜田知明氏と出版社勤務で「『新青年』研究会」会員でもある黒田明氏が三康図書館の資料を活用して様々な調査、研究を行ったその成果を踏まえ「金田一耕助」シリーズ作家だけではない横溝正史像について対談されました。

 まず、三康図書館の存在を知ることになった経緯について、浜田氏は(インターネットがまだ普及していない)少年時代から横溝の知られざる資料を探していた時に国会図書館や大宅壮一文庫での調査を報告した中島河太郎氏からの紹介で知ったとのこと、そして、黒田氏は浜田氏からの紹介で知ったとのお話しされました。

 次に当館の利用についてお話しされ、お二方共に、三康図書館発行の分厚い『蔵書目録 文学書編』(細名だけでなく細部まで記載。索引つき)や所蔵雑誌目次頁をコピーしたスクラップブック帳から探していた資料やその掲載号が判明し、資料の現物を直接手に取り調査し確認することができたそうです。

 その結果、単行本に未収録の作品や初出雑誌と単行本化された作品との内容の違いなどを発見されました。ほかにも、浜田氏は、横溝は若い頃から小説だけでなく、絵や和歌、俳句、作文等を当時の少年少女雑誌に投稿しており、編集者時代にはペンネームも使い捨てするくらい多数持ち(今で言う「捨てアカ」)、先輩・上司にして投稿時代の横溝にとってはその選者()でもあった雑誌『新青年』の初代編集長・森下雨村の名前まで使用していたという興味深いエピソードもお話しされました。それゆえ、お二方共に、横溝にはまだ発見されていないペンネームや作品もあるのではないか思うので、これからも調査していきたい、と対談を結ばれていました。

  

参加者アンケートには、

「横溝正史作品は好きでよく読んでいたが、未収録短編集などがあるとは知らなかったので、すぐ読みたいと思った。」「一人の作家を深く探求する、というテーマはとても面白かった。」「三康図書館を知った事がとにかく良かった。研究者の研究に対する熱量も伝わり良かった。」など多くの感想が寄せられました。 

  

また、今後取り上げて欲しいテーマとして、

「横溝正史や新青年界隈についての講演があれば参加したい。」「『新青年』の作家たち」「大橋家と博文館の話(硯友社絡めて)」「西遊記と仏典、民衆に仏教を教えるための説話などについて」等のご意見も寄せられています。

 

 

2023年度 第2回講演会

 

開催日時:2023年11月26日(月・祝)14:00~15:30

開催方法:YouTube・会場参加によるハイブリッド開催

テーマ:博文館が育んだ明治文学~硯友社と永井荷風を軸に~

講演者:多田蔵人 氏

 

参加費:無料

定員:YouTube定員なし・会場先着30名

申込者:114名(内、会場参加は20名)

アーカイブ視聴回数:95回

 

内容:

 博文館は明治期最大の出版社として多くの文学作品を世に送り出しました。

とりわけ支配人・大橋乙羽の盟友だった、尾崎紅葉を総師とする文学グループ「硯友社」がもった影響力は、博文館を抜きにしては語れません。

三康図書館の所蔵する資料をもとに、紅葉とともに活動した江見水蔭や巌谷小波の活動についてご紹介します。

さらに、硯友社の文学活動の末期に現れた文学者・永井荷風という存在の意味について、考えたいと思います。

 

報告:

今回の講演会では、明治時代最大の文学流派だった「硯友社」にまず焦点を当てて、尾崎紅葉や江見水蔭、巌谷小波といった博文館に関係が深かった人々が模索した「文章の書きかた」を、三康図書館所蔵資料も見ながら具体的にご説明いただきました。次に、硯友社と深い関わりを持った文学者として永井荷風を取りあげ、彼の文体がどのように展開したかお話しされました。

講演会を聴講された方々からは、「「三康図書館の文献紹介をまじえ、力の入った資料を作成いただき、ありがたく聞かせていただきました。ありがとうございました。」「明治文学にはあまり詳しくありませんが、興味深くお話をうかがいました。当時の生き生きとした文体を感じ取ることができました。」「硯友社と博文館の関係や永井荷風と博文館のつながりなど興味深く拝聴しました。特に硯友社の文や語へのこだわりや書き方(趣向)のお話は少々難しくも面白かったです。」「先生の大事なご本を拝見させていただきありがとうございました。わかりやすいご講演でした。せっかく回してくださった本も読みたく、お話も集中して聞きたく、忙しかったです。」 などの感想が寄せられました。

 また、今後取り上げて欲しいテーマとして「硯友社や博文館の活動について、いろいろな側面から取り上げる講演を今後も開催してほしい」、「大橋図書館と東京市立図書館の関係や当時の図書館界について。児童へのサービスについて」、「博文館の編集者たちについて 大橋図書館員について」、「尾崎紅葉 金色夜叉」」等のご要望も寄せられています。

 

 

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